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余はカエサルだぞ!「我が名はネロ」(安彦良和)1-2
2010/01/12 [Tue]09:08
遅ればせながら文庫で読む。

キリスト教の弾圧や、ローマを焼いた皇帝ネロの話。
1巻は母を乗り越えて、皇帝として自立していくのだが、精神的な歪みはともかくとして皇帝の業務をそこそこにこなしている。
政情が安定しているし、市民や元老院が不満を持っていないうちは皇帝は遊んでいられる。
ネロが「求めずして国から贈りゆだねられた王位」は安定と栄華に根ざしているのだが、
少年ネロはそれを窮屈に思い、贈り主の象徴たる母から離れていく。

ネロ個人の黄金時代はそこから始まるのだけど、皇帝は個人ではありえないし、変態母性がウザいからって親子関係すら拒絶したら孤独になるだろう。

孤独を埋めるように、脂肪をたくわえ、肉欲とギリシャから借りた芸術に興じる2巻の「ふっくら顔」が哀れなこと。
その対比に出てくるのは、節制や愛を訴えるキリスト教だ。
ペテロやパウロが、イエス不在の時代に復活や神の存在を説くのだから、ネロでなくとも怪しむのが当然なのだけど、不安な時代には人智を超えた柱が求められるわな。
(「イエス」の後日譚でもあるよね、この辺は。うさんくさいのも納得)

人間、理屈や実体験で理解できる範囲では、限界があるんだよな。
安定した時代ならそれでいい。しかし、不安定、不満足な状況では、人智を超えた方向性や理屈ではない存在にすがる。
計算にだって、ゼロや虚数を使うのだ。

社会性を切り離した俗物皇帝には、それがわからない。
皇帝はシステムのてっぺんでしかないのに、独り立ちできると思ってしまった。
哀れな少年の屈折と暴走と挫折だけど、個人と社会と人智を超えたものとの関係性は、重たく読める。

ただの大馬鹿野郎、ではない。
自律と孤独、欲望と指導力、演説と権威、権力と統治装置の、バランスと余裕。
ネロは必然的に歪んでいくんだよな。


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「イエス」(安彦良和)の読みログ

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テーマ:今日読んだマンガは? - ジャンル:アニメ・コミック

キャスバル畏るべしと「愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN」(安彦良和)5
2009/06/27 [Sat]09:23
ジャブローきっかけで、過去編に。ジオン側の裏事情を語る「シャア・セイラ編」で、ルウム戦役あたりはまた続刊で、だ。
モビルスーツはガンタンク(初期型)しか出てこないし、ガンダムもアムロも出ない。

ヤシマ家のミライさんはちらっと出てくる。良家の令嬢という設定を使って、なるほど、後半のセイラとのからみに一味加わりそうだなー。

キャスバルからエドワウ、そしてシャアへと変わり身していく青年の物語なのだが、
「同年齢で顔がそっくり」なシャア・アズナブル君と「偶然」出会って、彼がジオン軍入りを志望したそことで「すり替わってバレない」というのは、ちょっと無理があるな。さすがに。
3つも重なってるものなぁ。
だいたい、瞳の色って欧米ではそこそこのアイデンティファイの材料じゃなかったか。
DNA鑑定まではせずとも、現代だって指紋や光彩で入国管理してるんだぜ。軍ならば身体検査のデータも渡すだろうし、どこかに違いはあるだろう。
ラル家が「そっくりな人物」を発見し、強引にすり替えた、くらいでもよかったかな~。偶然はひとつになるし。

ていうか、過去編は徹底的にガンダム世界、宇宙世紀ではない。
安彦良和が得意とする歴史漫画として描かれている。
謎の青年将校シャア、妹のセイラ、ラル家、タチ少尉、サビ家の面々とジオン・ダイクン。

酒場で情報交換とか、塔に幽閉されるとか、甲冑が動き出すとか、テキサスとか、イメージももはや架空の歴史もの。ガンタンクで我に返る。
そりゃ、ジオンもキリストじみるってもんだ。彼を正当化せずに、そこそこに狂ってる人物として描くところも、実に「そこが、安彦良和」だ。

歴史上の人物を使って、作者が解釈した歴史絵巻がつづられている。
過去編を描いた理由については、巻末で作者が語っているんだけど、動機はどうあれ、安彦良和はこれで「ガンダムを自分のものにした」んじゃないだろうか。
複数のスタッフがかかわり、監督もデーンと構えているモンスターコンテンツを前に、自分でしか描けない物語とした。できた。
漫画家としての自分のキャリアがなければできなかった形で。

それは作者にもガンダムにも、すごくいいことだと思う。


シャアとセイラが別れるシーンで、CGで風や空気の厚みのような演出が加わっている。
(ここが初めてでもんばいか)
塗りに魅力がある安彦絵をいじるなんて!と思いつつも、こういうのが入りまくったアニメもいいかな。
来るべきアニメ化への布石として、見えたりして。
(ユニコーンの次はコレでしょうと勝手に)

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誰よりも勇敢なマケドニア生まれの青年「アレクサンドロス―世界帝国への夢」(安彦良和)
2009/03/02 [Mon]09:29
「ヒストリエ」の副読になるかもと思い、読んでみる。エウメネスは一瞬しか出てこず、重要な歴史家はカッリステネスだ。そして回想するのはリュシマコス。

歴史漫画としてはダイジェスト型(ってそんな分類あるのか)なので、人名や地名は割合、省略されずに出てきていると思われる。基礎知識がないと、「いまどの辺?」みたいな感じで東征の雰囲気がつかみにくい。
世界地図を見ながら読むのがお勧め。世界史の教科書とか。

アレクサンドロスの若気の至りが極まる人となり、リュシマコスはじめ従士たちの葛藤は非常に人間くさくて、漫画だけで楽しめる。
ちょっと前まで同級生だったのに王子だからリーダーになり、英雄になり、王になり、覇者となる。
従士は友情や愛情(同性愛者だったって説もあるし)でついていくし、傭兵の職業兵士も勝ち馬だから乗る。さらに鼓舞がうまい。
ま、その分、よく反抗もされる。そこがドラマなんだが、実は無力な主人公は安彦漫画のお約束だ。

よっぽど漫画っぽい過剰なキャラ立ちなんだけど、思えばそこまで人を引き付ける伝説的な何かって、薄いんだよな。マジで戦争に勝てるってだけの人。
俺は神に選ばれたぞ的な、精神面での演出をしない。自分の運命に酔っている人として描かれている。
だから異民族の扱いがはっきりしないし、おかしなことをやるとすぐに突っ込まれる。
世界をすべてマケドニアにするとか、俺色に染めるとか、富を集めるってことじゃない。服従させることを重視してるってのは、自己満足だろう。そんなの、壮大な自分探しではないか。
それじゃ世界を支配しても、管理コストがバカにならんぜ、ってのは現代の凡人の感想だ。



「ユリイカ」の安彦良和特集号で指摘されていたが、普通の漫画は主人公が右から左に進む(ページの流れがそうだから)のに、「アレクサンドロス」では左から右へ進む。
これは東へ進軍している感覚からだろう、ということだった。
そこでも指摘されていたが、通常の逆方向へ進むためにアレクサンドロス軍が苦しそうに見えて、思わぬ演出効果となっている。
マケドニアを振り返るときは左の方向をむく。つまり主人公として普通の向きはそっちだったのにな、という感覚。
読みながらその指摘を思い出して、なるほど確かにな、と思った。知らずに読んで、気づいたかな。うーむ。

完全版 アレクサンドロス―世界帝国への夢完全版 アレクサンドロス―世界帝国への夢
(2008/03)
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亡びゆく者たちの夢の化身「麗島夢譚」(安彦良和)1
2009/01/30 [Fri]09:04
コミックリュウの創刊号を買う理由だった作品であり、3号目から読んでない理由の作品。
予想ではちょいちょい描いて、でっかい豪華版でドン!だったのだが、普通に一巻が出た。

島原の乱、そのものではなくてその後が主題。
天草四郎はホンモノの信徒だ。ここで信仰を聖域として扱いつつ、政治的・立場的に日本びいきくさいイギリス人忍者がカウンターとして出てくる。
物語を進めるエンジンとなるのは、いい意味で事情を知らないバカのドラ息子。
そこに武士道や兵法に生きる、信仰ナニソレ?みたいな武蔵や渋川がからんでくる。

なんともうっとうしい(笑)人間関係だ。楽しすぎるぞ。
例によって権謀術数をアクションで彩りながら野を駆けて夢をわめき地にもがくのだろうな。楽しみすぎる。

肥前忠吉でカットラスがバッキバキに折れるとか、鉄砲隊より武蔵がエライとか、わりと日本びいきなんだが、安彦世界だとこのままではすまないだろうな。戦争の規模になったら、個人の力は踏みつぶされるものだよ。それこそ島原の乱のように。


さて、今後はどうなることやら。いつ終わるんだろう。

ガンダムORIGINもあるのに大丈夫なの? と思えるが、あっちはもうクライマックスだからな。おそらく構想はできていて、あとは描くだけ。
アニメーター出身だから手が早いとか、どこかで読んだことがあるような。でも都市伝説じゃないのか。そもそも年齢的にどうなんだ。

「麗島夢譚」でもアクションシーンは速そうだ。
アタマのカラーのところだって、色数はそんなに多くない。でも鮮やか。ガンダムでもそうなんだけど、設定どおりに塗るなんてもちろんしなくて、見え方の演出としての色なんだよな。


麗島夢譚 (1) (リュウコミックス) (リュウコミックス)麗島夢譚 (1) (リュウコミックス) (リュウコミックス)
(2009/01/20)
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エルサレムで何かが起こる「イエス」(安彦良和)前後
2008/07/01 [Tue]08:57
安彦連鎖でログ。古書店で前編を買ってから後編を見つけるまで時間がかかった。
まったり探してる状態も悪くないけど、合本が出てるのは知らなかったなー。そっち買えばよかった。

聖書の漫画化でなくてイエスを漫画にするわけで、本人は奇跡を起こしまくる神の子じゃなくてただの正直者だ。
熱心党とか律法とか、背景がわからないとただの無頼人にも読める。

律法社会の現体制に正論でモノ申す。一般人の生活が苦しくて救いを求めてるのに、律法はなんもしてないよ、人のために律法はあるんじゃないのと言って支持を集める。
同時に反体制の人にも利用されて、そこへもきっと自覚的だ。

でも説得して回るには律法に対抗できるだけの神秘性、奇跡っぽいなにかが必要で、イエスはウソにならない範囲で合わせてる感じ。
三日後の復活にしても、ヨシュアとかの行動を読んでいたのではないか。
預言者じゃなくて予言者だったという見方もできるな。別方面の超能力者。
で、奇跡の復活を実感しちゃうとみんなは当然、人外のものとして恐れる。
でもその奇跡が口伝や書物で語られると、受け入れやすくなる。肉と言葉では重たさが違う。
死ぬことで奇跡が完結するというか、本人不在のほうがまとまると思ってたのかな、イエス本人は。


悪意はなく、正論があるゆえの優しさと厳しさって人物像は聖書的に合致しつつ神秘性は抑えようという着地点。
これ、海外で出版できるんだろうか。普通のキリスト教の世界はそこまで狭量じゃないかな。

荒涼とした風景、不穏な空気の描き方はさすがの味。
安彦漫画にしてはおとなしく地味に感じるのは、アクションが少ないからだろう。
活劇あってこその穏やかさよなー。

イエス (前編)イエス (前編)
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次の満月の夜、ジャブローが開く「機動戦士ガンダム THE ORIGIN 愛蔵版」(安彦良和)4
2008/06/30 [Mon]10:44
愛蔵版ではようやくジャブロー編。連載の方は佳境(いつでも佳境みたいなもんか)で、終わりが見えてきた。
表紙はシャア専用ズゴックだが、流れ的にドムじゃないの? ここで出さないとズゴックは出てこないんだっけか。

テレビアニメ版の記憶がほぼ残っておらず、劇場版で上書きされてるのでシーンによってテレビ準拠なのかオリジナル部分なのか、わからない。
でもマチルダ結婚式妄想、シャアとセイラの再会あたりの、多くの人が一枚絵で覚えているシーンはそのまま出てきて、ファーストガンダムの記憶として上書きされていく感じだ。
リュウ、マチルダの死が重なって、なんかもう泣くってよりかは疲れたよって空気は映像よりも濃いような。
なんだろう、ベタ塗りの効果かな。黒の強さ。印刷はつまるところ黒方向の表現で、映像は明るさ、白方向の表現だもんなとかソレらしく考えてみたり。
あとコマの大小で緩急やズームイン・アウトを誘導されて気持ちいいとか。
生き神ってのはヨクサル調だけど、安彦漫画の流れは好きだなーと強く実感した。


人物が増えたぶん、コマ数が使って、表情だけでじっ、とやりとりするシーンが印象的。
敵味方みんな人間らしく出てくる。前後の動きや性格がわかりそうなというか、突然そこにいる感じがしなくて、さすが熟成された設定世界を掘り下げてるなー。
と思えば、ジャブロー上空では雄大に飛ぶシーンを長めにしっかり見せてくれるし。
愛蔵版なんだからボリュームあって当然なんだけど、これでも2巻分だもんな。

んでもってフラウはいつも忙しい。素朴な表情から母性的な怒りまで、アムロや大人がなんだか静かに不満タラタラなのに対して自然にふるまえていてかわいい。すっかり戦場に慣れたのな、この子。
折り返しだ。
でも開戦前の話が入るんだよな。ここから、ORIGINの本領発揮。


おまけ。
リュウさんが死んでガックリしてるガンダムはなかなか面白い。モビルスーツがうなだれているとは、トニーたけざき方面からの逆流じゃないか。
ガンプラのMGガンダムVer.2.0が出たら、再現してみたいシーンだ。ガンプラはいかり肩だからダメか。

愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV    ジャブロー編愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV ジャブロー編
(2008/06/26)
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神の御指示が国王様の側にあるならば「ジャンヌ」(安彦良和)
2008/05/28 [Wed]09:26
あれ、昨日の投稿が消えてないか。「ナムジ」きっかけで読み返した漫画「古事記」(石ノ森章太郎)だったんだけど、うーん。なにかあるなこれは。テキストは保存しておいて、最後まで確認しないといけない。「保存」だけで見返さないもんだから。


気分を変えて、古書店で買った「ジャンヌ」を読む。オールカラー570ページの大作。
ジャンヌ自身でなく、ジャンヌの奇跡と悲劇に導かれるように戦地へ赴く、男装の少女が主人公。戦上手で神がかった歴史上の英雄は、作者として「描けない」ものだったそうな。(あとがきによると)
読んでいても、当時のフランスは混乱、戦乱に覆われていて国王だけど全然権威がない。これはいわゆる戦国時代ですか、日本でいうと。地域ごとにボスがいて軍を抱えていて、こぜりあってる。

で、そこでフランスの平和のために国王側についてジャンヌも、本作のエミールも戦う意思を持つんだけど、どこまでいっても争いごとだしな、というむなしさは残る。
題材がどうあっても、安彦良和漫画には違いない。結局、主人公は弱く、ジャンヌの悲劇に捉われて、最後にちょっとだけ出てきた奇跡に救われてと受け身だ。

時代背景について知識や興味が薄いため、外伝っぽい位置づけの本作をいきなり読んでもいかんのかな、と思った。知識があれば人名、地名からもっと臨場感を得られるはずだった。
でもそういったただの事例からでもドラマを作り、人間を書き起こしておくのも安彦漫画だったりするから、やっぱり作者自身としても「描けない」感触は最後まで残ったんじゃないかなーと勝手に思うのだった。


オールカラーなので読みごたえは大いにある。色気のある線と濃密な色をどっぷり見ていられる。
これ、フルカラーっていわないのは、画法として写真のような着色はしてないから、かな。背景はボケかけてたり、セリフのコマではただの薄い色バックだったりもする。読みやすさも踏まえた、彩色バランス、なんだろうか。考えすぎか。もともと細部まで描き込む図面のような絵じゃないし。

時代設定もあるんだけど、カラーなのに暗い。空はどんよりしてるし、屋内は緊張感が立ち込めてるし、にぎやかで明るい街や人々は出てこない。オールカラーのゴージャス感に対して、この暗さ。
前向きなシーンでも決死の覚悟みたいな空気が漂う。

思えば明るい安彦漫画って、あるのかな。絵がうまい、線が色っぽい、動きがかっこいいってのはよくいわれる形容だが、根本的に暗い、絶望的である、ネガティブってのも特色じゃないか。と思った。

ジャンヌジャンヌ
(2002/03)
安彦 良和大谷 暢順

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自然に自分はここにいるのだと「神武」(安彦良和)3-4
2008/05/15 [Thu]09:13
出雲大社きっかけの再読、続き。

ツヌヒコが死んで、ナムジが人質にまでしてイズモ族のクニの根拠が揺らいでしまった。というか消えた。
ツノミはまた居場所を失ってイワレヒコに付き合うことに。かっこわるい主人公だ。話のなりたちに参加できてないから使われるばかりで、ひどいめにあってる。ああ。

後半は神武の東征をメインにする戦記漫画。実は嫁取り物語だった、と。政略結婚で仕方なく潜入するイワレヒコ。こっちもかっこわるい。
全体に記紀の解説が多くなり、ツノミもイワレヒコもキャラとして窮屈そうだ。作者の解釈は大胆だが、それによって両者のかっこよさは削られている。
ここでも、安彦作品に多い、大筋にのまれてヒーロー性を失う主人公のセオリーがある。


苦戦続きのイワレヒコはあちこちで助けられ、勝ちはしていないが目的は果たす。
力でなく理想でもなく、政治的に勝利したように読めるな。兄ウカシもナガスネも自分でなんとかしてないもの。
手を下さず、集まった助力で事態が解決。このごっつぁんゴールぶりはなんだ。カリスマ性、血統で苦労もしょいこんでるが、とにかく素のままで生きていける。評価が難しい実績。
皇族らしい、とかいいだすとなんなんだけど、タイトルは「神武」だが主人公ではないからな。

ともあれ徐福伝説をバックに持つ中華なナガスネがヤマト起源のイワレヒコに追い落とされたと。ニッポンの始まり始まり。
で、その地のマキムクは大昔にオオドシが「ここがヤマトだ」とすでに言っていた土地だ。筑紫のヤマトはもうヌケガラだとオオドシは断言していた。それは予言だったのかもね。
ツヌヒコが死に、ヒミコが死に、オオドシも死んでいる。オオドシもイズモ起源だから、そこをイワレヒコが引き継ぐことで古代神話が完全に退場。
新生ヤマトがリセット状態から神話が始まる。すべての過去を踏まえてたいらげた、あたらしい神様だ。


で、神武の統治が始まってからもツノミの初瀬は邪魔っけにされてて、結局ツノミはどこからもうとまれたまま。ミトシがいてよかったと、心から思う。あ、ミトシがいたから死に方がああなったのか。

思えば続く時代の「蚤の王」(読みログ)でも初瀬の、出雲の扱いはひどいんだよな。
負けた神さまって悲しいなぁ。
てか、イワレヒコがあんなに苦労して神話をまとめたのにお前らなにモメてんだよ。
争いの始まりを記し、争いの続きを書き続けるのが歴史ですか。あーあ。

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東に国を統べる大王、生を受く「神武」(安彦良和)1-2
2008/05/14 [Wed]10:41
出雲大社きっかけで再読している古事記巻之二、「神武」。とりあえず2巻まで。

皇統の原点、神武天皇のなりたちを描く漫画だが、主人公はナムジの息子のツノミ。
ツノミはヤタガラスで、神武の忠臣だ。

冒頭は国譲り。ヤマトがミナカタを追いやり、ツヌヒコを立ててイズモを平定する。末子相続だからツヌヒコを立ててきたヤマトにイズモが国を譲ったと。うまい一致だ。どこまでフィクション(想像)かってのは横目にしつつもお話を楽しんで読める。
古代でも支配の正統性は大事なのだな。古代だからこそか。

剛腕で譲らされたナムジはイズモにも帰れず、ヤマトにも帰れない身。歳だし、もうなんともできない。
小島でヒボコと「やっぱ2人で組んで戦争やったらよかったかもね~」なんて言ってたかもしれない。(読み手の勝手な想像)

そのナムジが散り際に「死なん」「見届ける」と残したセリフは
「大いなる社がこの俺を祀って聳え立ち、天下を見下ろすのを!」だ。
イズモの支配は譲っても俺は神となって居座るぜ宣言。
きれいな見栄。まるで根拠がなく、特に伏線となるセリフでもない。そのまんま出雲大社のことだが、この時点ではただのハッタリに近い。

かっこいいが、ツノミはそんなオヤジの最後の見栄切りを知らずに放りだされた感じだ。このセリフがツノミを突き動かしている流れでもよかったんじゃないかと思う。
いちおう父親のナムジについては意識しつつも、ツノミとナムジは断絶しちゃっているしな。
大筋は変えられない(原作があるようなもんだ)から、こう、モノローグだけでもさ。
と、たたき上げキャラのナムジを愛してきた読者は思うのだけど。


後の神武、イワレヒコはヤマトとクマソの間に生まれた子。
出てきただけで戦争を止めたり、出会った瞬間にツノミがひざまずくカリスマ性を持っている。兄弟の中でひとり、すっきりした顔立ちだ。さすが。
「ナムジ」後半から薄れていた神話的なものをいきなりまとっている。
イワレヒコは苦労はするんだけど、モテるし賢い。ツノミは朴念仁だし「強くも立派でもない」とかイセポに言われる。かわいそうな主人公だ。いったりきたりで物語を動かす装置になっちゃってるような。
(ヤタガラスはそういう位置づけだってのはあるみたいだけど)
まぁ相方が後の神武天皇では、相手が悪いよな…。

結局ツノミには居場所がなない。
マキムクに行ってもヤマトに行っても、どっちにもすでに支配者がいて、なかなか国造りがどうこうに参加できない感じ。スサノオ一族、ナガスネ、ヒミコが長生きしすぎなんだよ。上の世代がいて若手が窮屈というやつですか……。

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小さくてか弱い者へ「ナムジ」(安彦良和)3-4
2008/05/13 [Tue]09:22
古事記漫画の続きを読む。

邪馬台国(ヤマト)が九州と畿内(マキムク)の両方にあって、畿内には秦からやってきた徐福の意思を継ぐ(と作中ではそうなってる)ナガスネビコががんばっている。イズモは韓国(からくに)の渡来人だし、古代の日中韓戦争だな。

これは神(イズモ)が人間(ヤマト)に屈する、もしくは人間が神を取り込む、克服する物語とも読めるか。神との戦いを肯定的に記述するというか。
そりゃ出雲大社の本殿に天皇陛下すら参拝できないわけだ。大元からして別の物語を背負ってるべきものなんだもの。

ヒボコは天孫族の末裔でありつつオニの面相のために追われ、土着の荒くれ者となる。その誘いを断ったナムジはイズモ(神)からはじかれて、土牢の中で人間(ヤマト)として生まれ変わる。強制的に。
神ではなくなったナムジはもうイセポに触れられないし、スセリ、ミナカタの元にも戻れない。
なにしろイズモとヤマトはクニどうしの争いをしているとかいう人間らしい対立じゃなくて、神と悪魔くらいの距離で対立してるんだから。お互いが正統性、神話を賭けている。
思えばいち早くヤマトに取り込まれたスサノオは早々と物語から退場しているしな。勝者側の包容力おそるべし。

ナムジが「お前はお前だ」と言われて居所を求めたまではいいが、結婚したり子供ができたり、義理を立てたり意地を張ったりの根性が出てきて、人間に堕ちた、と読むのは強引か。
オオクニヌシなのに、最後に得たのは小さな島ひとつ。家族がいればそれでいいというようなことではもちろんシメられず、物語はツノミとイワレヒコ(神武)に引き継がれるのだけど、ナムジ自身の人生ってなんだったのよ。


古事記うんぬんはおいといて大河漫画として読むと、
「どこにも正式に属さない青年が自分の居所となるクニ、場所を求めてさまよいつつ、しかし最初から決まってたかのような歴史の波にはさからえずに小さくさびしくなって終わる」
というのは、なんだか「虹色のトロツキー」だな。歴史の流れに対して一個人は無力である。
ナムジもヤマトの歴史には逆らえなかった。もしくは敗北が決まってるのに主人公をナムジにするのが安彦流、なのか。

感情移入して挫折感をともに味わう物語、だ。あああ、でも、俺はナムジについていきたい。まっすぐでたくましくて、悩んだり迷ったり流されたりはしても、野心的でかっこいいんだもの。

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